2025.06.08
ビジネスアナリシスとは|概要・重要性・BABOK・資格試験・研修など
- 1 ビジネスアナリシス概要
- 2 ビジネスアナリストとは
- 3 ビジネスアナリシス・プロジェクトマネジメントの関係
- 4 ビジネスアナリシス標準(BABOK®・PMI®ビジネスアナリシス・ガイド)
- 5 ビジネスアナリシスの資格試験と研修
- 6 ビジネスアナリシスの研修
1 ビジネスアナリシス概要
ビジネスアナリシスは字面からするとビジネスの分析ということになりますが、ビジネスアナリシスとはどのような仕事でしょうか?
ビジネスアナリシスは、BABOK®(後述)によると、「ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする専門活動」と定義されます。
また、PMIビジネスアナリシスガイドにおいては、「ビジネスアナリシスは、ソリューションの実現を支援するために実行される一連の活動」としています。
どちらの定義に従っていても、問題と機会を見極め、ニーズを特定し、合致するソリューションを推奨し、価値を獲得するために戦略的意思決定を支援するものとなります。
ビジネスをする目的は、価値の獲得のためです。新製品開発などで売上を伸ばしたり、生産性を高めたりすることで新たな価値を獲得します。その際に、ビジネスアナリシスは、価値を最大限高める最適解を分析し、ソリューションを提示します。
つまり、経営者がやりたいこと(ビジネスの変革)を、客観的に分析・設計・提案し、経営者のやりたいことを叶え、ビジネスの価値を最大限に高める仕事なのです。
なお、これら変革によって影響を受ける人たちがいます。経営者だけでなく、部署内外・取引先など様々なステークホルダーです。変化によっての価値の獲得がステークホルダー間のメリットのバランスをとっているかを考える必要もでてくることに注意が必要です。
つまり、ビジネスアナリシスの最大の役割は、現状の業務を分析し、ビジネスニーズを現実に実行可能なベストなソリューションを関係各部署などステークホルダーとコミュニケーションを取りながら構築していく仕事となります。
もう少し、具体的に見ていくと以下のようになります。
問題と機会の特定:
- 「収益が伸び悩んでいる」「業務プロセスが非効率でコストがかさむ」といった社内の問題を発見します。
- 「未開拓の市場がある」「新技術を活用すれば新しいサービスが提供できる」といった社外の機会を見出します。
ビジネスニーズの特定と実行可能な解決策の提案:
- 特定した問題や機会に対し、「なぜ変化が必要なのか」というビジネスニーズを明確にします。
- そのニーズを満たすための、実現可能な解決策を複数検討し、提案します。これは戦略的な意思決定を直接サポートする行為です。
要件の引き出し、分析、伝達、管理:
- 解決策を実現するために「何が必要か」という具体的な要件を、経営層、現場担当者、顧客など様々なステークホルダーから引き出します(エリシテーション)。
- 集めた要件を分析・整理し、開発チームや関係者に明確に伝達します。そして、プロジェクトが完了するまで、その要件が正しく満たされているかを追跡・管理します。
価値の測定と実現:
- 提案した解決策がもたらすビジネス上の利益(ベネフィット)を定義し、その成果をどのように測定するかを定めます。ソリューション導入後、その価値が実際に実現されたかを分析し、評価します。

2 ビジネスアナリストとは
ビジネスアナリストとは、ビジネスアナリシス実施する人であり、肩書きや組織は問われません。
ビジネスアナリシスという言葉を知らなかった方でも業務についてはご自身もしくは周りにビジネスアナリシス業務を遂行されている方はいらっしゃると思います。
日本ではプロジェクトマネージャがビジネスアナリシス業務を遂行しているといわれます。
経営層が作りたい製品やサービスと実際にできる製品やサービスが異なることはよくあります。ビジネスアナリストは、経営層のニーズを引き出し、新しい製品やサービスなどを通じて企業の価値の最大化のためにベストなソリューションへと落とし込みます。その際に、様々なステークホルダーの意見のバランスを取りながらビジネスアナリシス活動を進めていく必要があるため、ビジネスアナリストは誰もが納得するような客観性とコミュニケーション能力が必要といわれます。
ビジネスアナリストの多様な専門分野
「ビジネスアナリスト」という肩書きは、その専門性に応じてさらに細分化されます。以下に代表的な例を挙げます。
- ビジネスプロセスアナリスト (Business Process Analyst)
- 組織内の特定の業務プロセス(例:受注から納品までの流れ)に焦点を当て、そのフローを分析し、非効率な点、ボトルネック、無駄を特定します。業務の「見える化」を行い、プロセスの効率化、自動化、標準化といった改善策を設計・提案します。
- 組織内の特定の業務プロセス(例:受注から納品までの流れ)に焦点を当て、そのフローを分析し、非効率な点、ボトルネック、無駄を特定します。業務の「見える化」を行い、プロセスの効率化、自動化、標準化といった改善策を設計・提案します。
- 要求・要件アナリスト (Requirements Analyst)
- ビジネスアナリストの中核的なスキルである「要求定義」「要件定義」に特化した専門家です。様々なステークホルダーへのヒアリング、ワークショップ、アンケート調査などを通じて、曖昧な要望やニーズを引き出し、誰が読んでも誤解のない、明確でテスト可能な「要件仕様書」を作成します。
- ビジネスアナリストの中核的なスキルである「要求定義」「要件定義」に特化した専門家です。様々なステークホルダーへのヒアリング、ワークショップ、アンケート調査などを通じて、曖昧な要望やニーズを引き出し、誰が読んでも誤解のない、明確でテスト可能な「要件仕様書」を作成します。
- システムアナリスト (Systems Analyst)
- ITシステムやソフトウェアの導入・改修を通じて、ビジネス課題の解決を図ります。ビジネスサイドが求める「要件」を、開発者が理解できる「システムの仕様」に変換する、まさにビジネスとITの橋渡し役です。技術的な制約を理解しつつ、ビジネスニーズを満たす最適なシステムソリューションを設計します。
- ITシステムやソフトウェアの導入・改修を通じて、ビジネス課題の解決を図ります。ビジネスサイドが求める「要件」を、開発者が理解できる「システムの仕様」に変換する、まさにビジネスとITの橋渡し役です。技術的な制約を理解しつつ、ビジネスニーズを満たす最適なシステムソリューションを設計します。
- プロダクトアナリスト (Product Analyst)
- 特定の製品(プロダクト)やサービスに焦点を当て、その成功に責任を持ちます。市場データ、競合分析、ユーザーの利用状況データなどを分析し、製品の機能改善、価格戦略、マーケティング施策などをデータドリブンで提案します。特にアジャイル開発の現場で、プロダクトの価値を最大化する重要な役割を担います。
- 特定の製品(プロダクト)やサービスに焦点を当て、その成功に責任を持ちます。市場データ、競合分析、ユーザーの利用状況データなどを分析し、製品の機能改善、価格戦略、マーケティング施策などをデータドリブンで提案します。特にアジャイル開発の現場で、プロダクトの価値を最大化する重要な役割を担います。
- カスタマージャーニーアナリスト (Customer Journey Analyst)
- 顧客が製品やサービスを認知し、興味を持ち、購入し、利用し、そしてファンになるまでの一連の体験(カスタマージャーニー)を分析・可視化します。顧客推奨度調査やWebサイトの行動分析などを通じて、顧客接点(タッチポイント)ごとの課題を特定し、顧客満足度やLTV(顧客生涯価値)を向上させるための改善策を提案します。
なお、Linkedin の調査によると2020年に需要のあるハードスキルとしてビジネスアナリシスが6位に
なっています。
3 ビジネスアナリシス・プロジェクトマネジメントの関係
ビジネスアナリシスは、組織の目標を達成するために、ステークホルダーから要求を含めた情報を収集し、ビジネスニーズを特定してそのニーズを満足させるための戦略(ビジネスケース)と実行可能なソリューションを推奨することで、戦略的な意思決定を支援するプロセスです。
実際に、このような意思決定は、どのようなプロジェクトでも始める前に必ず行われているプロセスです。また、ビジネスアナリシスにはプロジェクト憲章の作成やプロダクトスコープの決定についてプロジェクトを支援し、完成したソリューションがニーズを満たすことを評価して受け入れを支援することが含まれ、ポートフォリオマネジメントなどの上位マネジメントとプロジェクトマネジメントの境界に位置するプロセスといえます。
3.1 プロジェクトマネージャがもつべきビジネスアナリスト能力
ビジネスアナリストは、ビジネスニーズをもとに、価値をもたらす具体的な最適解となるソリューションを推奨する業務であり、プロジェクト・マネジャーは、そのソリューションを提供するために必要となる作業の管理に責任を持つ仕事です。
近年、企業が抱える課題は複雑さを増している中で、事前課題を発見し、戦略立案、ソリューション
を提供するビジネスアナリシスフェーズからプロジェクトにかかわるプロジェクトマネージャ
も増加してきています。
したがって、今後のプロジェクトマネージャーがもつべき力としてビジネスアナリシス能力が必要といわれてきています。
4 ビジネスアナリシス標準(BABOK®・PMI®ビジネスアナリシス・ガイド)
4.1 BABOK®とは
BABOK®は、ビジネスアナリシスのやり方をまとめた標準であってビジネスアナリシスへのアプローチの方法を説明しています。カナダを本部とするビジネスアナリシスのための独立非営利団体IIBA®(International Institute of Business Analysis)が発行しています。
4.2 PMI®ビジネスアナリシス・ガイドとは
「PMI ビジネスアナリシス‧ガイド」(Project Management Institute)もビジネスアナリシスのやり方をまとめた標準です。ビジネスアナリシスのコンテキスト、環境、影響について考察します。各プロセスを実⾏するためのインプットとアウトプットと技法について説明し、ビジネスアナリストが主要なステークホルダーやチームと協業する機会を明らかにしています。
BABOK及びPMI ビジネスアナリシスガイドの両社ともビジネスアナリシスの標準をまとめたものです。グローバルな標準としてはBABOKの方が利用されているようです。全体像を学ぶことができます。
個人的に読み物としてはテクニックとかの説明もわかりやすいことからPMI ビジネスアナリシスガイドはおすすめです。
5 ビジネスアナリシスの資格試験と研修
5.1 ビジネスアナリシスの資格試験
資格試験としてはIIBA®が実施しているCBAP®が専門家の試験としてメジャーなものとなっています。またPMIⓇが実施しているPMI-PBAもありますが、CBAP®が日本語で実施されていることからビジネスアナリシスの専門資格としてはCBAP®を受験される方が多いかと思います。
また、ビジネスアナリストの人材募集の要件などをみてみるとしてCBAP®を挙げている企業が多くあるため、キャリアのためにもCBAP®取得がよいといえるでしょう
6 ビジネスアナリシスの研修
イープロジェクトのビジネスアナリシス研修には資格試験対策と実務講座があります。基本的なものから専門家資格であるCBAP®の試験までご用意しています。
CBAP®受験対策講座はIIBAに日本で唯一認定されている試験対策講座となります(2024年04月現在)